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「ヤバイ」の謎に迫る
この言葉が持つ、本当の意味を知っていますか?
「この料理、ヤバイ(美味しい)」「寝坊した、ヤバイ(まずい)」。良い意味でも悪い意味でも使われる不思議な言葉、「ヤバイ」。このインタラクティブ・レポートでは、その驚くべき語源から、現代に至るまでの劇的な意味の変遷を「探索」していきます。
「ヤバイ」の語源は江戸時代?
「ヤバイ」のルーツには複数の説が存在します。最も有力とされる説は、江戸時代の「ある場所」に関連するものでした。下のタブをクリックして、各説を比較してみましょう。
「矢場(やば)」説(最有力)
「矢場」とは、江戸時代の弓矢の射撃場(現代の射的ゲームのような場所)を指します。しかし、その多くは幕府非公認で、裏では賭博が行われるなど、治安が良くない場所でした。役人が見回りに来ると「まずい」「危険だ」という状況になるため、この「矢場」が「ヤバイ(危険・不都合)」という隠語の語源になったという説が最も有力です。元々は盗人やテキ屋の間で使われる言葉でした。
「危険」から「最高」へ。意味の歴史的大変遷
「ヤバイ」の意味は、時代と共に劇的な変化を遂げました。下のタイムラインの各時代をクリックして、その意味がどのように変わっていったのかを見てみましょう。
【江戸時代】「危険・不都合」
語源が示す通り、この時代の「ヤバイ」は、盗人やテキ屋の間で「役人が来た、危険だ」「この状況はまずい」といった切迫した状況を伝えるための隠語でした。一般の人が使う言葉ではありませんでした。
現代の「ヤバイ」用例大全
現代の「ヤバイ」は、まさに万能ワードです。下のボタンをクリックして、ポジティブ、ネガティブ、それぞれの使われ方を見てみましょう。
ポジティブな「ヤバイ」
- 「このラーメン、ヤバイ」(信じられないほど美味しい)
- 「あの人のテクニック、ヤバイ」(人間業とは思えないほどすごい)
- 「昨日のライブ、マジでヤバかった」(感動して言葉にならない)
- 「あの新作バッグ、ヤバイ」((危険なほど)欲しくなる)
- 「この漫画、ヤバいくらい面白い」(読むのが止まらないほど面白い)
- 「あの子、ヤバくない?(可愛い)」(常識外れなほど可愛い)
「ヤバイ」の意味の多様性
現代の「ヤバイ」が、いかに多様な意味で使われているか。そのバランスを視覚的に見てみましょう。このチャートは、言葉の使われ方の「多様性」そのものを示しています。
このチャートは、現代の「ヤバイ」が持つ意味の広がりをイメージしたものです。ポジティブな使われ方とネガティブな使われ方が、ほぼ同程度の「強さ」で共存している、非常に稀な言葉であることがわかります。
なぜ「ヤバイ」はポジティブになったのか?
「危険」「ダサい」という否定的な言葉が、なぜ「最高」「すごい」という正反対の意味を持つようになったのでしょうか。それには、大きく2つの理由が考えられます。
「ヤバイ」が本来持っていた「(常識では考えられないほど)危険」というニュアンス。この「危険」という意味よりも、「常識では考えられないほど」「尋常ではない」という「程度の甚だしさ」が注目されるようになりました。その結果、「尋常ではないほど素晴らしい」「尋常ではないほど美味しい」といった、ポジティブな対象にも使われるようになったのです。
若者たちは、自分の感情が許容量を超える(沸点に達する)ような強い感覚を、既存の「すごい」や「素晴らしい」では表現しきれないと感じました。そこで、感情の高ぶりそのものを「ヤバイ」の一言で表現するようになったのです。ポジティブもネガティブも「ヤバイ」で表現できる便利さが、若者文化の中で一気に広まったと考えられます。