『20世紀少年』とは何か？ともだちの正体に迫る【原作と映画の違いも解説】

『20世紀少年』は、浦沢直樹氏が描いた長編SFサスペンス漫画です。1999年から2007年まで『ビッグコミックスピリッツ』で連載され、全22巻の単行本として刊行されました。物語の壮大さや緻密なストーリー展開に加え、深いテーマ性が読者の心をつかみ、後に3部作の実写映画としても制作されました。

本作の最大の魅力のひとつは、物語全体を貫く謎──「ともだち」の正体です。この謎が物語の中心に据えられ、読者や視聴者を最後まで引きつけました。本記事では、「ともだち」の正体について、原作漫画と映画版の違いを踏まえつつ、その背景や意義についても詳しく解説します。

『20世紀少年』の概要

物語は、1990年代から未来にかけての世界を舞台に展開します。主人公・遠藤ケンヂとその仲間たちが子供時代に考えた「予言の書」が、現実の世界で次々と実現していくという設定です。

ケンヂたちの「予言の書」は、地球を救う正義のヒーローが登場するストーリーでしたが、いつの間にか、それを模倣する形で現実世界に「ともだち」と呼ばれるカリスマ的リーダーが出現。彼の手によって人類を脅かす「血の大みそか」や「新宿爆破事件」などが起こり、世界は未曾有の混乱に陥ります。

原作『20世紀少年』では、「ともだち」の正体が物語の最終盤まで明かされません。このため、読者は長い間、彼の正体や動機について考察する楽しみを持ちながら物語を追うことができます。

最終的に明かされるのは、「ともだち」の正体がカツマタ君（勝俣忠信）であるという事実です。カツマタ君はケンヂたちの小学校時代の同級生でしたが、存在感の薄いキャラクターでした。

彼は、小学校時代にケンヂたちがいじめの対象として扱ったり、無視したりすることがありました。特に、ケンヂたちが理科のフナ解剖を行った際、カツマタ君は解剖の前日に姿を消し、以降、幽霊のように噂される存在となっていました。このエピソードは、物語全体を通じて重要な伏線となっています。

「ともだち」の計画の元祖ともいえるのが、ケンヂの同級生であるフクベエ（服部哲也）です。フクベエは、ケンヂたちが子供の頃に描いた「予言の書」を忠実に再現する形で世界を恐怖に陥れる計画を練りました。しかし、フクベエが物語の中盤で死亡すると、その役割を引き継いだのがカツマタ君でした。

カツマタ君はフクベエの影の存在として動きながら、最終的には「ともだち」として表舞台に立つことになります。彼は、過去の疎外感や孤独を埋めるために「ともだち」という存在を作り上げ、その象徴として行動しました。

実写映画版『20世紀少年』では、原作に基づきつつも独自の解釈や設定が加えられています。映画版でも「ともだち」の正体はカツマタ君であると明かされますが、その描写は原作とは異なる点が多々あります。

映画版では、フクベエが小学5年生の時点で死亡しているという設定が加えられています。この変更により、フクベエの役割がより早い段階で終わり、カツマタ君が単独で「ともだち」として行動する期間が長くなっています。

また、カツマタ君自身の幼少期や彼が「ともだち」となった過程が映画版では明確に描かれており、原作よりも彼の動機や心理を理解しやすくなっています。特に、映画版では彼がいじめられた背景や孤独を感じた理由が具体的に描かれ、それが彼の行動にどのように影響を与えたのかが丁寧に表現されています。

以下に、原作と映画における「ともだち」に関する主な違いをまとめます。