ざんぎり頭とは?
このセクションでは、「ざんぎり頭」という言葉の基本的な定義と、その興味深い語源について解説します。
明治時代の西洋風ショートヘア
「ざんぎり頭」とは、主に明治時代に流行した西洋風の短い髪型を指します。
それまでの日本男性の「ちょんまげ(丁髷)」を落とし、西洋人のように短く刈り込んだスタイルです。
この髪型は、古い江戸時代の習慣を捨て、新しい西洋文化を取り入れる「文明開化」の象徴とされました。
なぜ「ざんぎり」? 語源
この特徴的な名前の由来には、主に2つの説があります。
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「散切り(ざんぎり)」説:
当時は西洋式の理髪技術が未熟で、見よう見まねで切ったために毛先が不揃いな「散切り」状態になったことから。
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「総切り(そうぎり)」説:
髪を全体的に短く切りそろえる「総切り」という言葉が、時代とともになまって「ざんぎり」に変化したという説。
いつ、なぜ流行したのか?
ここでは、なぜ「ざんぎり頭」が日本で急速に普及したのか、その歴史的な背景とターニングポイントを探ります。
普及へのタイムライン
「断髪令」の発布
明治政府が「散髪脱刀勝手たるべし」という「断髪令」を発布しました。これは、ちょんまげをやめて髪型を自由にして良いという布告ですが、実質的には西洋化のために短髪を推奨するものでした。
しかし、長年の習慣から、当初は国民の抵抗が根強くありました。
明治天皇の断髪
普及の決め手となったのが、明治天皇ご自身がちょんまげを落とし、ざんぎり頭にされたことです。
国のトップが率先して実行したことで、政府高官、軍人、そして一般市民へと、ざんぎり頭は急速に広まっていきました。
文明開化のシンボル
ざんぎり頭は、単なる髪型の流行ではありませんでした。「ちょんまげ=古い封建時代」、「ざんぎり頭=新しい文明時代」という対比のシンボルであり、旧時代と決別し、近代国家を築くという当時の人々の決意表明でもあったのです。
文明開化の「音」
「ざんぎり頭」は、当時の文化にも大きな影響を与えました。このセクションでは、有名なフレーズに込められた意味を紐解きます。
「ざんぎり頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」
フレーズの正体
これは、明治時代初期に流行した「俗謡(ぞくよう)」または「都々逸(どどいつ)」と呼ばれる短い歌の一節です。
当時の世相を風刺したキャッチコピーのように、人々の間で広く知られていました。
込められた意味
もちろん、物理的に頭を叩いて音がするという意味ではありません。
これは、**「ざんぎり頭にしている人こそが、新しい時代の考え方(=文明開化)を持っている人だ」という比喩表現**です。
逆に、「まだちょんまげの古い頭を叩いても、新しい音はしない」という皮肉も込められています。
現代に生きる「ざんぎり」
明治時代に生まれた「ざんぎり」という言葉は、現代でも使われ続けています。このセクションでは、現代における2つの異なる使われ方を紹介します。
① 美容室での使い方(肯定的)
現代の美容業界では、「ざんぎり」は**「あえて毛先を不揃いにカットする技法」**や**「ラフで抜け感のあるおしゃれなスタイル」**を指す肯定的な言葉として使われます。
計算された「不揃いさ」が特徴です。
- シャギーカット
- ウルフカット
- マッシュウルフ など
② 日常会話での使い方(否定的)
一方で、日常会話では「カットの失敗」という、明治時代の語源に近い否定的な意味で使われることもあります。
意図せずガタガタになってしまった状態を指します。
例:「子どもの前髪を切ったら、ざんぎり頭になっちゃった」